視線を巧みにコントロールする 光のパーティション

 仕事帰りの会社員、若者、シルバー層に家族連れまで、幅広い客層が集う賑やかな店内。饗されるのは、オーナー自ら築地に足を運んで仕入れているという旬の魚や野菜を使った料理の数々。しかも価格はリーズナブル。JR新浦安駅に直結するアトレ新浦安の人気店「新助」は、1980年の開業以来、地元でずっと愛されてきた居酒屋だ。

アトレ新浦安店は1993年に開店し、何度か改装を行ってきたが、2016年にJRの高架橋の耐震補強工事が行われたため、高架橋下にある同店も全面的に改装工事を行い、同年秋にリニューアルオープンした。

その新店舗では、コーリアン®が「光るパーティション」として採用された。このユニークなアイデアについて、設計を手がけた建築士の小川裕之氏と湊健雄氏にお話をうかがった。

「クライアントからのご要望は、全体をワンフロアで見通しよく、ただし、落ち着いて料理やお酒が楽しめるように、カウンターに座られたお客様とテーブル席のお客様の目線が交差しないようにしてほしいとのことでした」と小川氏。

そこで、開放感とプライバシーを両立するため高さを抑えたパーティションに照明を入れて、光によって目線を遮る〝光のバリア〞を提案した。


パーティションの長さは約6m。「一続きの大きなものを置くことで、空間そのものを広く感じさせる効果があります。これだけの長さをシームレスで作ることができるのもコーリアン® だからこそですよね。これをほかの素材で作る場合は、どうしても分節されてしまうと思います」と小川氏。

「圧迫感がでないよう、軽さを感じさせるもので空間を仕切ろうと考えました。とはいえ、お客様が手を触れる場所になりますから、強度や耐久性の高い素材でなければなりません。コーリアン®は、光を入れると透明感が生まれ、軽さを演出することができるうえ、強度も十分でした」。

角を丸く加工できる点で安全性に優れていることも、採用した理由のひとつだったという。

 「開放感のあるつくりにすることで、カウンターの一部が店舗の入口から見えるようになりました。光るパーティションがカウンターの中に立つオーナーや板前さんを彩る装置にもなって、その仕事ぶりをエンタテインメントとして見せる演出にも一役かっています」と湊氏。

店舗はガラス張りで道路に面していて、光るパーティションは道行く人からも見えるため、アイキャッチとしての役割も果たしている。


連続する円のパターンは、コーリアン® の表面を彫り込んで、模様を浮き上がらせている。「クライアントからは、明るく開放的にというご要望のほかに、見たことのないものを作ってほしいと言われていました」と湊氏。リニューアル前の純和風なデザインを一新した店内は、光の演出で非日常な雰囲気も漂わせている。

 「ちょうど目に入りやすい高さなので、照明を置くのが難しい場所なのですが、コーリアン®を通した光は柔らかくなるので、このアイデアを実現することができました。短い距離で光がグラデーションして、表情がでるところもよいですね」と小川氏。

使用されたカラーは、和紙のような雰囲気も持つグラーサホワイト。タイルや木など、素材感を大切にデザインされた和の空間にも、違和感なく馴染んでいる。

「和の雰囲気もありながら、モダンな印象に仕上がったことで、新浦安という現代的な街並みにも似合う店舗になったと思います」。

 開放感と居心地のよさを両立させたリニューアルで、より入りやすくなった「新助」アトレ新浦安店。ますます多くの人が集う繁盛店として、地域の人々に愛されていくことだろう。

 

 

●所在地 千葉県浦安市入船1-1-1 アトレ新浦安1F
●運 営 有限会社エイム
●設 計 株式会社小川都市建築設計事務所 小川裕之
     湊健雄事務所 湊健雄
●施工/照明計画 株式会社リンク
●デュポンコーリアン® 加工協力 株式会社エイペクス

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