ファッションミュージアムを演出するクリエイティブで美しい数々の仕掛け

2015年3月、リモデルオープンを迎えた「伊勢丹 新宿本店」の本館5階、6階フロア。2013年3月のファッションフロアに続く形となった、リビング・アートフロア(5階)とベビー・キッズフロア(6階)のリモデルオープンは、伊勢丹 新宿本店のコンセプトである“ファッションミュージアム”を大きく打ち出した形となった。

「百貨店は、もはや“モノ”を売るだけではなく、相談やソリューションといった“コト”を売る時代だと考えています。フロアの構成もそれを意識してデザインしていただきました。もっと見たい、もっと探したいと思わせる仕掛けのあるフロアに仕上がったと感じています」と語るのは、株式会社三越伊勢丹プロパティ・デザインの仁田野 慎一氏。

その言葉を裏付けるかのように、2基のエスカレーター回りの、“パーク”と呼ばれる広場を中心に、回遊性の高い導線に生まれ変わったフロアの各所には、気軽にお茶を飲みながら相談できるカウンターや、体験できるスペースが配置されている。そして、その象徴となるカウンターや什器に、コーリアン®が採用されている。

「リモデルに際して留意したのは、コミュニケーションを取りながら一緒に選ぶというサービスを、空間デザインに反映させることです。使い方を伝えることをテーマにしたエリアを可能な限り一体感のあるものにし、かつ奥のお買場へと誘引するフォルムが必要です。さらに、置いてある商品自体が本物ばかりなので、壁や什器もそれに負けない素材を世界中から探しました」とデザインを担当した株式会社グラマラスの佐藤琢磨氏。コーリアン®を採用したことで、イメージを最大限に活かした空間が実現できたという。

たとえば、5階のキッチンスタジオ。継ぎ目のないコの字形のスタイリッシュなカウンターの反対側には、アールを活かした優美なデザインを採用。料理づくりに欠かせないシンクもコーリアン®で統一したことで、カウンター自体に上質感をもたせながら、主役である商品やお客様が際立つ空間となった。また、6階の遊びの広場では、円形のカウンターを継ぎ目なしで表現。淡いグレーの上質な質感が、大人でも楽しめるフロアづくりというコンセプトに合った仕上がりが実現したという。

 


5階キッチンスタジオ。実際に使用するキッチンであるため、機能上必要な機器を搭載しながらも、コーリアン®で統一したことによって、高いデザイン性を保っている。


キッチンスタジオのカウンターは、シンクまでウィッチヘーゼルで製作。

 

(左)デザイン家電陳列棚はシラスホワイト。一段高くなった中央の台の側面も、曲げ加工で製作。(中)メッセージカード陳列棚は、コーリアン®をフレームのように演出。(右)アート&フレーム売り場カウンターにもシラスホワイトを採用。

表現したいデザイン、目指すべき理想の着地点があったとしても、素材がそれに耐えうるものでなくては実現は難しい。時には、デザインそのものを変更せざるを得ないこともある。たとえば今回のような創造性豊かな意匠の実現は、コーリアン®あってこそだったのかもしれない。

「コーリアン®を採用したいというのは、デザインチームからの提案でした。リモデルに際しての素材選びは品質、安全性、コストなどさまざまな要因を鑑みてセレクトしなければなりません。お客様に安全にお買い物をしていただくため、より快適な空間にするために、どのような素材が最適なのかというのは、その場その場で検証し、選定しています。そのため、総合的な観点からデザイナーさんの提案をそのまま活かすのではなく、代替えの提案をお願いするケースもあります。けれど、今回はコーリアン®であればまず間違いがないだろうと、そのまま実施に移しました。耐久性、メンテナンス性にも優れている素材ですので、採用して正解だったと考えています」と仁田野氏。

「コーリアン®を使うことによってデザインのイメージをそのまま表現することができました。加工のしやすさに代表される自在性と加工精度の高さがあるうえに、美的観点からも優れた素材だと感じています。色みや風合いもよく、想像通りの着地ができました。木や金物では表現できない質感と、百貨店の売り場に求められる耐久性とメンテナンス性を両立できたのは、この素材ならでは。他の素材の良さと上手く融合できるコーリアン®を適所に使用することにより、マテリアル配置としても、非常にバランスの取れた空間に仕上がったと思っています」と佐藤氏も言葉を重ねる。

リモデル後、商品を展開する面積自体は減少したにもかかわらず、顧客の嗜好が高価格帯にシフトしたことによって、売上そのものはキープされているという伊勢丹 新宿本店の新しいエリア。見て、触れ、体験し、相談して選ぶ、新しい百貨店のスタイルをコーリアン®の什器が支えている。

 


遊び心のある意匠が印象的なベビーフードコーナーはシラスホワイトを採用。天板に加えオリジナルデザインでつくった陳列トレイ類もコーリアン®製。


ゆっくり相談ができる6階ギフトサロン相談カウンターには、落ち着きのあるモンタナ スエードを採用。濃色の木目ともよくマッチしている。

 


お客様を迎えるギフトサロンの受付カウンターには、高級感を備えたモンタナ 理念を採用。やわらかな印象を与える円形フォルムも美しい。



6階の遊びの広場のカウンターはレインクラウド。コーリアン®の優しい手触りや清潔に保ちやすい特性は、子どもたちが使う場所にも適している。

 

 

●所在地         東京都新宿区新宿3-14-1
●リモデルオープン     2015年3月
●床面積(リモデル部分) 5階 6200㎡ 6階 4700㎡
●建築設計 株式会社丹下都市建築設計
●内装設計・デザイン   株式会社グラマラス
●監修・施工       株式会社三越伊勢丹プロパティ・デザイン