静けさの中に浮かんだ3次曲線の白いカウンター

1959年の創業以来、上野・神田エリアに拠点を構えてきた丹青社が、2015年9月に品川シーズンテラスに本社を移転した。同社は、新オフィスのテーマを「未来創造拠点」とし、「知的創造性」と「業務効率」の向上に取り組んでいる。ビルの19階にある受付ロビーは、そのテーマを象徴するかのような空間だ。

訪れた人は、まず、白と黒、2つの対照的な空間に出迎えられる。床から天井まで真っ白な空間が、受付ロビーだ。そこに、コーリアン® が使用されている。

「黒の空間は、創業者・渡辺正治氏のアトリエをイメージし、我々の原点でもあるデザインとビルトが一体になっていた時代を表現しています」と話してくださったのは、同社のプリンシパル クリエイティブディレクターである上垣内泰輔氏。

「クリエイティブミーツ」と名付けられた黒いスケルトンな空間は、社内外のクリエイティブが出会う場、人と人とのコミュニケーションの場として活用される。

一方、受付周りのビジネスライクな「白の空間」は、ディスプレイ業界の将来性を表現。

「ディスプレイ業界は以前と大きく変化し、デザイン性が高いものを創造するだけではなく、さまざまな場面で、クリエイティブを使った幅広いサービスを提供し、お客さまの課題を解決することが求められています。それに応えることが、私どものこれからの課題の一つです。

白い空間では、ビジネスパートナーとしてクライアントをサポートしていくという姿勢を、クイック、シャープなイメージでデザインしました」。

同社の原点と未来、対照的な2つの世界観を向かい合わせることで、そのどちらも忘れずに進むという意思を表しているのだという。


直線的なデザインの多目的カウンターやベンチ側面もグレイシアホワイト。座面に用いた革は、グレイシアホワイトの色に合わせて染色した。「白の色違いというのは、意外に目立つので、塗装や染色で合わせられるものは限りなく近づけています」と上垣内氏。

2つの空間には、それぞれの中心に、同社の施工技術の高さがわかるカウンターが配置されている。白の空間に置かれた受付カウンターは、3次曲線の複雑な形状で、床からふわりと浮かんでいるように見えるデザインが特徴的。このカウンターと、奥に並ぶ多目的カウンター、そしてベンチが、いずれもコーリアン® でつくられた。

「受付カウンターについては、浮いているように見せることが唯一の意図で、最大の課題でした。施工担当はかなり苦労したようです」と上垣内氏。

床に設置していないように見せるため、カウンターの断面形状は、かなり急激なカーブを描いている。そのため、施工時は分割されたパーツが安定せず、何人かで押さえながら現場接着して仕上げたという。


究極の浮遊感を実現するため、カウンターの腰と床の接点が見えないアールの角度を追求。その結果、角度がかなりきつくなり、受付スタッフはアールの内側に足をのせて座ることに。しかし、クッションを敷き込むなどの配慮で、「移転前の受付カウンターより座り心地がよくなった」という評価を得たそう。

「白の空間の静けさ」を演出するため、あらゆる素材の白を限りなく近いトーンに統一していることや、スポットの光を弱く抑えて床や天井、什器による乱反射照明を最大に生かした照明計画も、その浮遊感をより効果的に感じさせているようだ。

 

 

●設計  株式会社丹青社 http://www.tanseisha.co.jp
     洪恒夫、上垣内泰輔、万井純、高橋久弥
●施工  株式会社丹青TDC
●デュポンコーリアン®加工協力 
    シーシービー株式会社
●所在地 東京都港区港南1-2-70 品川シーズンテラス19F