西武鉄道の観光電車「西武 旅するレストラン52席の至福」が、2016年4月にデビュー。池袋〜西武秩父駅間などを運行し、和・洋・中の著名シェフが監修したコース料理を楽しめるレストラン電車だ。
車両は、既存の「4000系」4車両1編成を大幅に改装。1号車は多目的車両、2・4号車が全52席のオープンダイニング、3号車はキッチン車両となっている。デザインは隈研吾建築都市設計事務所が手がけた。
外観は、秩父の四季と荒川の水をダイナミックに表現。内装も自然をモチーフに、沿線の伝統工芸品や地産木材を採用している。3号車に設けられたオープンキッチンには、コーリアン® が採用された。
池袋〜西武秩父駅間、西武新宿〜西武秩父駅間で運行され、往路はブランチコース、復路はディナーコースを提供。西武新宿〜本川越駅間の運行も予定。
「使用する素材は、鉄道車両用材料として不燃認定がとれていることが大前提でした。さらに、キッチンという機能上、さまざまなものを置きますし、お客様が直接手を触れることもあります。そこで、耐熱性や耐水性がありながら、ハードになりすぎないコーリアン® を採用しました」と話してくださったのは、設計室長の名城俊樹氏。
「L字の長いカウンターでも、目地のないジョイントができる点もよいですね」。3号車では、天井の杉材や床のカーペット、カウンター腰部分の木目が印刷されたアルミパネルなど多くの素材が使用されている。
「いろいろな素材が混在していますから、どうしても目地のようなものが目に入ります。そこで、空間の中でも大きな面となるキッチンカウンターは、シームレスで抽象化された雰囲気にしたいと考えました」。
オープンキッチンで行われる盛り付けの様子などを、乗客は自由に見学できる。「お客様の目線で同時に見える場所は、トーンをそろえたいと考え、カウンター内の作業台やバックカウンターのトップも同色のコーリアン®を採用しました」と名城氏。
使用色はモンタナスエード。車両全体と調和する茶系統のカラーだ。
「面積が大きい分、ソリッドカラーを用いて完全にニュートラルな表現にすると、のっぺりとした印象になってしまうので、素材感のある柄入りのものを選びました」。
これまでもさまざまな用途でコーリアン® を採用されている名城氏。よりニュートラルな表現を求めるときには、グレイシアホワイトを用いることも多いという。
「たとえば、テーパーをつけることでよりシャープな印象に仕上げたり、表面の磨き方を変えることでも、異なる表現ができそうですね」と、色柄だけでなく、その加工性を活かすことで、さまざまな表現ができることを語ってくださった。
同じ3号車内にあるバーカウンター。窓の外を流れる景色を眺めながらドリンクを楽しめるよう作られた。こちらもカウンタートップにはモンタナスエードが使用されている。
カウンタートップと、カウンター腰部分のアルミパネルの小口を押さえるパーツもコーリアン®で製作。乗客が万が一ぶつかってもケガをしないよう、丸みを帯びた小口処理をしながら、シャープな意匠を表現。
●外装・内装デザイン
株式会社隈研吾建築都市設計事務所
隈 研吾、名城俊樹
●施工 株式会社総合車両製作所
●取材協力 藤田商事株式会社
●企画・運営 Toshiki Meijo 西武鉄道株式会社