寛ぎの時間を生む 表情豊かな素材の共演

 隈研吾氏監修による「ANAラウンジ」が新千歳、伊丹、福岡など各地の空港で相次いでオープンし、話題を集めている。共通するコンセプトは「一期、一会」。"伝統的日本美”と“先進性”を融合したこれまでにない新しいラウンジ空間を提供したいというANAの想いを、その言葉に込めた。各空港でデザインの方向性は共有しつつ、それぞれの地域性をマテリアルやディテールに反映しているという。

 その第一弾となった新千歳空港は2017年9月にリニューアルオープン。ラウンジに入るとすぐに苔をあしらった「山」のある大きなカウンターテーブルが置かれている。

 「一人でも気軽に座ることができる席を設けたいというご要望があったので、大きなワークテーブルをイメージしてこちらを提案しました。空間を象徴する存在になるので、なにか地域性を感じさせるものを取り入れようという話になり、北海道の大地や空港周辺の丘陵地帯の景色を抽象化してこのように表現しました」と話してくださったのは、隈研吾建築都市設計事務所の名城俊樹氏。

 テーブルのワークトップにはコーリアン®のホワイトオニックスが採用された。ブラウン系の床面やファニチャーに囲まれて、透明感のある白いテーブルは特別な雰囲気を醸し出している。

 「大きな面になりますので、少し表情のあるもの、高級感のあるものにしたいということで、ホワイトオニックスを選びました。シームレスに仕上げており、模様が大きいのでジョイント部分のつながりが不自然にならないか少し心配していましたが、まったく問題ありませんでした」。

 ほかにも、ラウンジ内のコンシェルジュカウンターや滑走路に面した東側の壁一面に造りつけられたカウンターのワークトップ、ソファ席の肘掛部分、マガジンラック、返却台など、さまざまな場所にコーリアン®が採用されている。

「メインのカウンターテーブルに関しては、これだけの大きさなので、それに対応する強度があり、さらに現場でジョイントができる素材でなければなりません。ほかの部分については、たとえば輪染みがつかないこと、汚れを拭き取りやすいこと、削れにくいことなど、ANAさんから示された機能面の条件をクリアし、空港という場所でのハードユースに耐えられる素材を探すとなると、コーリアン®に変わるものはなかなかみつかりません」と名城氏。

 ラウンジ内の壁には北海道産の栓(せん)の木の板材が貼られ、飛行機のフラップをイメージした天井には和紙、壁の巾木や家具の蹴込みにはブロンズの硫化いぶし仕上げなど、表情豊かな自然素材が採用されている。その中にあっても、流れ模様や石目柄のコーリアン®は自然に馴染み、ほかの素材とともに、ラウンジ空間にふさわしい居心地のよさを生み出している。

柄のあるコーリアン®の使い方について名城氏にうかがってみると、「最近の我々の意匠の方向性にも通じるのですが、シャープにデザインしながらも、ミニマルになりすぎないところを目指す場合は、少し模様が入ると、ナチュラルな雰囲気をつくりやすいですね」と語ってくださった。

 

●デザイン監修 隈研吾建築都市設計事務所
●設計・施工  清水建設株式会社

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