素材の可能性を拡げるデザイナーの視点

安藤北斗氏と林登志也氏によるコンテンポラリーデザインスタジオ「we+」が、ミラノデザインウィーク2018の期間中に開催された「M a t e r i a l s V i l l a g e 」で新作「Peep」を発表。その一部にコーリアン®が使用されたということで、お話をうかがった。

「Peepは、通常では見ることのできない光学現象を可視化する照明とパーティションのシリーズです」と安藤氏。

原型は2017年に M a t e r i a l C o n n e X i o n T o k y o が東京で開催した「M A T E R I A L D E S I G N E X H I B I T I O N 2 0 1 7 」で制作。さまざまな素材の持つ可能性をデザイナーの視点で引き出し、新しい用途につなぐ道筋を紹介する企画展で、we+は株式会社NBCメッシュテックとコラボレーション。通常は医療用のフィルターやシルクスクリーン印刷の版などに使われる高精細メッシュの新たな使用方法を探った。そのプロセスの中で生まれた作品をアップデートし、ミラノで発表したのが「Peep」だ。

「当初は新しい用途を見出すまでのプロセスを見せることが目的でしたが、さらに作品としての強さも打ち出したいと考え、メッシュ以外の素材を見直すことにしました」と林氏。

「Peep」 高精細のメッシュを介して光や風景を眺めることで生まれる“分光”や“モア レ”といった現象を抽出し、「Peep = 覗く」ことで、異次元の世界を体感 できる照明(上)とパーティション(下)のシリーズ。

photo: Masayuki Hayashi
 

そこで、照明・パーティションとも筐体部分の素材をコーリアン®に変更。「ミラノでは作品が手に取られることが多いのですが、人の手というのは、触るだけでさまざまな情報を感じとります。コーリアン®は、触れることでも『上質感』を伝える素材だと思います。また、無垢から削り出したかのようにジョイント部分が見えない仕上がりも、プロダクトとしての精度の高さとなり、人の目にきちんと伝わるのではないかと考えています」と安藤氏。

コーリアン®の加工を手がけたのは、大日化成工業。「今回はインテリアとしての高いクオリティを保ちながら、機械部品としての寸法精度や強度を保つ必要もありました。試行錯誤を重ね、新しい加工方法にも挑戦しました」と同社の平澤正嗣社長。驚くことに、デザイナーのクリエイティブな発想は、「コーリアン®の可能性」もいつの間にか拡張していたようだ。

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