ローズ氏はこう説明します。
「地表を三角形の面として抽象化することで、3Dピクセルという新たな形態をつくることができました。これにより、現在と過去のデータを同じ面で表現することができます。三角形の面は実世界とデジタル世界の境界を曖昧にし、見る者に美しさとデータに対する興味を感じさせます」

Photo:Jake Fitzjones for DuPont^™Corian^®, all rights reserved

この特殊なパネルを正確につくるため、コーリアン^®の加工にはCutting Edge社が選ばれました。一つひとつの3Dピクセルのエッジをシャープにつくるため、オリジナルのソフトウェアも開発されました。

これは従来のCNC加工の限界を打ち破るものだったと、ローズ氏は言います。

「Cutting Edge社は当社の期待をはるかに上回るレベルで、この作品の製作に取り組んでくれました。通常、このようなかたちでのマシン操作はできません。そこで、コーリアン^®を可能な限り最高な仕上がりに加工できるよう、専用のプログラムを書いてくれたのです」

この地図は、グレイシアホワイトのコーリアン^®でできた5枚のパネルからできています。機械で注意深く切断、接着した後、手作業で3Dピクセルのかたちに仕上げました。

正確に地図を再現したパネルの上には、高解像度のプロジェクターでアニメーション映像が投影されます。

パネルは映像を流していない時も、流している時と変わらない完璧な美しさを表現できるように設計されました。LSM社が提示した要件のなかでも重要な、「データを消しても映えるもの」という条件は充分に満たされています。

とはいえ、この施工例の最大の特徴はアニメーションで情報を表示するという点です。

もともと、光による演出効果に優れたコーリアン^®ですが、この事例でアニメーション映像を映し出すという新たな使い方が生まれました。

「当初は今よりもはるかに大きな地図に、背後からRGB LEDで光らせようとしていました」と、ローズ氏は言います。

 The Agency of Design社はアニメーション映像の開発期間中、LSM社のビジネスの本質を正確に理解するため、LSM社と緊密に連携しました。一連の会議を通じて、プロジェクトへの協力と当事者意識が醸成されました。

その結果、完全にこのプロジェクトのためだけにソフトウェアが開発されたのです。最終的にアニメーション映像には何百もの航路、数百万に及ぶ保険利用者の所在地のデータ、100年分の嵐の進路情報が盛り込まれました。100年分の嵐の情報のなかには、嵐の現在地を示すWebベースのGPS情報を参照した「現在の嵐」映像も含まれています。

デザイナーとクライアントの協力によって生まれた「光る地図」は、イギリスのアワード「Surface Design Awards」で、Commercial Interior Surface部門の最優秀賞を受賞しました。