気鋭のデザイナー集団we+が語るコーリアン®の可能性

©Masayuki Hayashi

we+が2016 年9月にフランスで開催された「PARIS DESIGN WEEK2016」に合わせて、パリ市内のコンテンポラリーデザインギャラリー「Gallery S. Bensimon」で発表した「Patience」は、刻々と動く顔のパーツによって時刻を示す時計のような作品だ。モニターに映し出された3人の人物。その口は、1秒に1回、「パッ、パッ」という音を出しながら開閉を繰り返して秒を刻む。目は、アナログ時計の針のように回り、右目で時を、左目で分を示している。そのモニターを収めた白い額縁は、コーリアン®でつくられている。

 

 

今回、コーリアン®を使用していただいた「Patience」はどんな作品でしょうか。

林氏(以下H) 「Patience」は、「忍耐」という意味の時計です。人が、ある瞬間に額の中に閉じ込められてしまったように見える形を考えました。私たちは日々、良くも悪くも時間に縛られて生きていますが、そういう人と時間の関係をあらためて考えてもらえたら、という思いも込めています。

安藤氏(以下A) 息つく暇もなく時を刻んでいる状態が、標本箱のような筐体にパックされてしまった、というのが、表現したかったコンセプトのひとつです。


©Masayuki Hayashi

 

額の素材として、コーリアン®を選んでいただいた理由はどのようなところでしょうか。

H   最初のプロトタイプは、木+白塗装で作りました。それはそれで成立していたのですが、パーマネント作品として、ずっと飾っていただくものを作るには、やはりコンセプトだけではなくてモノとしての佇まいが強くなくてはいけないと考えました。そこで、コーリアン®が候補にあがりました。

 

数ある色柄の中からグラーサソリッドホワイトを選んだのは、どのような理由でしょうか。

H   カラーについては、ほかも検討しましたが、モニターを引き立てるという意味でも、グラーサソリッドホワイトの佇まいが一番フィットすると感じました。透明感があることで、スタンドアウトしすぎず、環境にすっと馴染む調和性もメリットかもしれませんね。

A   コーリアン®の中でも透光性が高く、光と組み合わせることで作品全体の見え方にも奥行きがでてくる点が魅力的で、新しい表現方法になるのでは、という期待もありました。加工面では、シームラインが目立たないように、ほとんどの角を留め接着にしています。その上ですべてをピン角仕上げにできる素材としての強度も、魅力でした。

 

実はコーリアン®は、角アールの表現ができる点で選ばれることも多いのですが。

A    建築で使用する場合や、マスプロダクションでピン角は難しいですよね。アートに寄った作品だからこそできた表現だと思います。この作品の中で、非常に重要になってくるのはモニターですが、その部分にすっと目がいくよう、余計な要素を極力減らしたいと考えてピン角にしました。実現できたのは、加工をお願いした大日化成工業さんの加工精度の高さによるところもあると思います。


額縁の角は三方留めで組み立てられているが、正面の板も留めで接着しているので、コーリアン®の小口はまったく見えていない状態。


「コーリアン®の額が素晴らしいコンセプトの作品にふさわしい佇まいをつくるお手伝いができて、うれしく思っています」と大日化成工業 代表取締役社長 平澤正嗣氏。

 

分野にとらわられず、さまざまな表現をされるお二人からみて、コーリアン®という素材の面白さや、可能性はどのようなところにあると思われますか。

A   一番の魅力は、素材の存在感だと思うんです。奥行き感や素材としての精度が、佇まいに現れている。質量や密度、と言ってもよいかもしれません。

H   今回、コーリアン®を選んだ理由のひとつには、素材の持つクオリティの高さがあります。加工の工程を考えても、一点一点を大切に作っていくプロダクトとの相性もいいのではないかと思います。

A   たとえば、透光性質の高いカラーであれば、デジタルデバイスのモニターを下にいれて、コーリアン®にうっすらと情報が表示されるような、ユーザーインターフェースになるかもしれない。サインにもなるし、あるいはこれまでにない家具になるかもしれません。新しい視座で検討することで、可能性は広がっていくと思います。

H  石のようにどっしりとした質感があるのに、均一なので、人工物と自然物のちょうどよい中間地点、という印象がありますね。それはコーリアン®でなければ、出せない質感だと思います。光の反射とか、見た目の落ち着き感は、独特だと思います。

A  そうですね、良い意味での、違和感。重さを感じるのに、均一な面が継ぎ目なく、シームレスに続いていく不思議な感覚は、ほかの素材にはないですね。

H  そのエンドレス感をデザインで表現できると面白いものができるかもしれませんね。
 

 

 

 

we+
安藤北斗氏と林登志也氏によるコンテンポラリーデザインスタジオ。
プロダクト、インスタレーション、グラフィックなど多岐に渡る領域
のディレクションとデザインを行い、テクノロジーや特殊素材を活用
した実験的なアプローチを追求している。

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