ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」でおなじみのスタートトゥデイグループの「東京オフィス」が、2015 年12月、港区青山に完成した。
こちらに拠点を置くのは、システム開発やWEBデザインなどを専業とする株式会社スタートトゥデイ工務店ほか、計4つのグループ会社。約500坪のオフィスは会社ごとのパーティションを設けず、人員増減などにもフレキシブルに対応できるワンルームとして計画されている。
天井は、鉄骨下地を現しにして、工事現場を連想させるハードなデザイン。システム構築の作業にも通じる「拡張性」を表現しているほかにも、驚くほど豊富に置かれた植物や、約60種類ものデザイナーズチェアが並ぶフリースペースなど、目新しさにあふれるオフィスの中でも、ひときわ目をひくのが、エントランスの正面にある、球面ガラスに包まれた大会議室だ。
「大会議室はオフィス全体の見通しを阻害しないように、透明な空気の膜のような空間としました」と話してくださったのは、オフィスのデザインを手がけた株式会社NAP建築設計事務所の中村拓志氏。
オフィスに入るとすぐ目の前に、シャボン玉のような大会議室が表れる。三次曲面の大きなガラスの一枚をスライドさせると、中に入ることができる。会議室を球形とした理由は、オフィス自体が楕円形のフロアであったため、その環境を活かしたとのこと。テーブルの中央に影が落ちるよう照明を配置して、テーブル面が中央に向かって傾斜しているデザインを強調している。
間仕切りのガラスは、新幹線の操縦席で使われる風防ガラスを製作する職人により、三次元熱曲げで製作された。
「会議室の中で行われる議論の熱気で、空気が膨張したような、活気も表現しています」。
その会議室の中央に置かれているのが、直径4mの円形テーブルだ。まずはその大きさにも驚くが、さらに特徴的であるのは、テーブル面が中心に向かって下がっていること。
「クライアントからは、集中しやすい会議室をつくりたいというお話しがありました。そこで、テーブルに傾斜をつけることで、自然に前傾姿勢になり、意識が中心に集まりやすい環境をつくりました」。
傾斜は約8㎜。テーブルに置いたペン類が転がらないギリギリの角度を検証したという。
「天板については、削り出しで傾斜をつけることができる素材を探しました。無垢材や突き板なども検討しましたが、これだけの大きさのものをシームレスにつくることが可能である点で、コーリアン®を選定しました」と中村氏。
16人が着席できる円形テーブルはコーリアン®グレイシアホワイトで製作。搬入時は5分割され、現場でシーム接着作業を行った。
このテーブルでは、プレゼンテーションやミーティングのほか、取締役会なども行われるという。
「『アーサー王と円卓の騎士』の物語に登場する円卓になぞらえて、グループ会社の役員たちが、上下関係なくフラットに向かい合う場をイメージしました」と中村氏。
精鋭たちが集い、白熱したミーティングを繰り広げるその中心で、コーリアン® の円卓が、静かに輝く様子が目に浮かんだ。
テーブルの周りに座ると、自然に前傾姿勢になるため、テーブルの端はRの形状に加工され、もたれかかっても心地よく受け止めるデザインに。
オフィスの中央にあるキッチンは、会社の枠を超えたコミュニケーションの場として計画。ハイスツールが並ぶカウンターにはコーリアン®シエラブラッククォーツを採用。「素材感を求めて、石目の入ったものを選びました」と中村氏。
●設計 株式会社NAP建築設計事務所
中村拓志
●家具製作 有限会社 ヤマシタ・プランニング・オフィス
市野俊介
●デュポン™コーリアン® 加工協力 株式会社 インテック
●所在地 東京都渋谷区神宮前5 - 5 2-2 青山オーバル・ビル
●施主 株式会社スタートトゥデイ